キュレーションサイトの分析と成長の可能性に関する研究

概要・目的

今やインターネットは情報過多で氾濫し、生活者への情報提供が最適化されていない。
この課題に対して、独自の視点で情報を整理整頓して発信する「キュレーションサービス」が近年注目されている。この研究は各キュレーションメディアの市場規模や戦略を分析し、今後マネタイズできるキュレーションメディアに必要なポイントを結論付けたものである。

研究内容

■WEBにおけるキュレーションメディアの定義■

そもそもWEBにおけるキュレーションメディアとはどう定義さているか?

簡潔に言うと、インターネットという情報が氾濫している世界において、その情報の質(価値)に合わせて、「選択、分類、目録作成、案内」を行ったメディアである。いわゆる「NAVERまとめ」に代表される「まとめサイト」である。それでは、なぜキュレーションメディアが今日台頭しているのか?

■キュレーションメディア成長の背景■

【図:流通情報量と消費情報量】

キュレーション1

これは総務書 情報通信政策研究所による「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果」(2011年8月)を参考にしたグラフだが、流通情報量が年々増えても消費情報量は一定であるということを表している。

これが何を意味するのかというと、昔はキーワードが含まれる情報をユーザー自身が選別していたものが、キーワードに含まれる情報が多くなりすぎて、ユーザーが選別する行為にコスト(手間・時間)が発生しているということである。 その結果、コストをかけないために情報の選別ではなく、情報の質の選別をユーザーが求めるようになり、解決策として情報の質や傾向を一定のクラスタ向けに選別した集合体=キュレーションメディアが登場したのである。これにより利用者と事業者、両者に変化が起きた。

①利用者側の変化

インターネットを利用しての情報収集は、スマートフォンやタブレット型端末の普及によって、「部屋でじっくり」から「行動の合間に」、つまり「暇」から「隙間」にという情報収集のスタイルがスピーディーになった。それによって、情報収集は短時間で自らの欲しい情報だけとなった。

②事業者側の変化

少ない投資でも情報をまとめる切り口次第で、短期間で注目度とアクセス数を高めるウェブサイト構築が可能になるメリットがあり、参入を目論む企業が多い

■キュレーションの3つの方法■

キュレーションサービスのキュレーション方法は、大きく3つに分かれる。

1.アルゴリズム

2.人力

3.アルゴリズム+人力

キュレーションメディアはオリジナルのコンテンツが少なく、引用や個人的観点で構成されている。良いコンテンツを作成するためには、「切り口と編成力」が重要となり、良いライターが必要となる。つまり、人的リソースはキュレーションメディアの成長に欠かせない。

キュレーションサイトの市場規模は高い成長が見込まれている。その証拠に矢野経済研究所が行った調査(「NAVERまとめ」などのまとめサイト、「Antenna」などのニュースキュレーションアプリ、「Origami」などのソーシャルコマースサイトの広告料、物品販売や出品料、プラットフォーム構築に関するコンサルティング報酬などをキュレーションサービス市場と定義)がある。

2014年度の今日キュレーション市場規模は前年度比94.5%増の178億6000万円となると見込んでいる。今後も右肩上がりの成長を続け、2015年度には286億5000万円、2017年度には395億3000万円に拡大すると予測している。サービス別では、ソーシャルコマースから派生する物品販売や出店料、手数料の成長率が最も高いと予想している。

キュレーション2

特にニュース系のキュレーションアプリの成長が高い。ICT総研の調査によると、2014年度のニュースキュレーションアプリ利用者数は前年度比73.3%増の2242万人と見込んでいる。スマートフォン時代も相まって2017年度には4435万人に拡大すると予測している。また、ニールセンが発表した利用状況の統計によると、2014年10月の月間利用者数は、「SmartNews」が385万人、「Gunosy」が298万人、「Yahoo!ニュース」が187万人、「Antenna」が105万人、「LINE NEWS」が85万人と多くのユーザー数を持っている。 

ニュースは誰もが毎日読む消費財である。PC 時代の Google や Yahoo! のような、強いモバイルポータルになるという点で、その普遍的な魅力や高いエンゲージメント・レートを得て成長しているのである。

当然のことながら、キュレーションメディアは海外でも発展している。では、日本との違いはあるのだろうか?海外で人気があるにも関わらず、日本で未発達の斬新なモデルはあるのであろうか?以下、日本と海外のキュレーションメディアの違いや傾向について分析する。

■日本と海外のキュレーションメディアの違い・傾向■

①日本

【調査方法】

インターネット検索から総ダウンロード数(アプリ)、月間ユーザー数、会員登録数をもとに人気メディアを抽出している。そのメディアの強みや、ターゲット層をもとにカテゴリー分けを行った。

【調査結果】

既存の人気キュレーションメディアをリサーチしてまとめたものがこちらである。

ホライズタルメディア(カテゴリー網羅)
ニュース(5) 男女共通(4) 男性向け総合(2) 女性向け総合(14)
Yahoo!ニュース NAVER まとめ JOOY (ジョーイ) MERY (メリー)
LINEニュース nanapi  Smartlog (スマートログ) 4meee! (フォーミー)
Vingow (ビンゴー) Antenna(アンテナ)   TRILL(トリル)
グノシー TABI LABO   ガールズまとめ
スマートニュース     curet (キュレット)
      M3Q
      by.S(バイ・エス)
      Grapps
      Peachy(ピーチィ)
      @GIRL TIMES
      トレンド女子まとめ
      ギャザリー
      4yuuu! (フォーユー)
      cuta (キュータ)
バーティカルメディア(カテゴリー特化)
衣(2) 食(6) 住(2) 旅(5)
Ciel(シエル) CAFY (カフィ)  キナリノ RETRIP(リトリップ)
STYLE HAUS(スタイルハウス) 食べログまとめ iemo(イエモ) Holiday (ホリデー)
  テリヤキ   Find Travel(ファインド トラベル)
  ippin(イッピン)    HUGLOG~旅ブログ
  メシコレ(mecicolle)   Tabimo(タビモ)
  macaroni (マカロニ)   トリップアドバイザー
健康・美容(2) 経済(1) 動画・画像(4) その他(8)
からきゅれ NewsPicks Whats(ワッツ) CuRAZY (クレイジー)
itnail-イットネイル   dropout sercus (サーカス)
    ポケッチ Togetterまとめ
    feely (フィーリー) minp!
キャリア・学び(3) ゲーム(1) ショッピング・ギフト(2) Bitecho(ビテチョー)
Career Park(キャリアパーク) GAMY(ゲーミー) Anny(アニー) うまキュレ
マナトピ   KAUMO(カウモ) Japaaan

この表から特に人気の高いキュレーションメディアをピックアップし、マトリクス化したものがこちらである。

【キュレーションメディアの比較】

キュレーション4

それぞれのタイプと戦略内容についての独自の考察を以下に述べる

①新聞戦略

この戦略は独自アルゴリズム技術&パーソナライズ化によってリアルタイムで人気の高いニュースを公正に検知しカテゴライズしている。また、多岐にわたるコンテンツをユーザーに届けるためにはメディア提携が非常に重要となる。新聞は誰もが必要とし、かつ消費財であるため、市場のパイは圧倒的に大きい。結果としてユーザー数も多くなる。マトリクスからもそれが見て取れる。

この戦略は米国でも通用した。SmarNews は、ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン版のクリエイター Rich Jaroslovsky 氏を起用後、2014年10月にアメリカでローンチ。3ヶ月で月間アクティブユーザ数100万人を突破し、30社のメディアパートナーと提携している。

②雑誌戦略

この戦略は似た興味を持つユーザー同士のコミュニティ形成をさせ存在意義を高める。ユーザーにアカウントを作成させ、他のユーザーをフォローさせ、仲間のコミュニティメンバーと対話させることで、パーソナライゼーションを強調している。コンテンツの幅が広くてもターゲットの選定が緻密であることがコミュニティ形成に大きく関わる。例えば女性向けの総合キュレーションメディアは上記の表にも挙げている通り、レッドオーシャン市場である。その中でも成長する背景には、それぞれターゲット(20代向け、30代向け、ママ向け、働く女性向け)を絞ってキュレーションしているからである。ユーザーにとっては自分と似たような属性が集まるので、共有の際のコミュニティ形成がしやすい。

③専門誌戦略

この戦略は雑誌に比べて、取り扱うコンテンツの幅を狭めてコンテンツの内容を深掘りさせている。専門的な知識や情報をオリジナルコンテンツとして掲載することで、エンゲージメント率を高め、ユーザーの定着を狙いとしている。こちらのターゲット選定は年齢や属性というよりかは、「コンテンツの内容そのものに関心がある人」である。つまり、コミュニティの形成よりかはコンテンツの内容を自分の知識とする人たちである。このタイプに分類されるNewsPicks は、平均ユーザーが1日あたり11分間、最もヘビーなユーザーで毎日40分間アプリを使っていると発表している。

次は、キュレーションメディアの表からいくつかのメディアをピックアップして各戦略タイプにあてはめ、独自にポジショニングしてみる。

キュレーション5

縦軸には読むことが前提か、見ることから始めるかで、キュレーションメディアを閲覧態度を表す軸としている。一方、横軸には広分野のカテゴリーを扱ったか、特定分野にフォーカスしたかで、取扱うコンテンツの幅を表す軸としている。

コンテンツの幅を広くすれば当然ターゲットユーザーの幅も広くなる。新聞・雑誌型のキュレーションメディアは記事の新鮮さを重要としている。なぜかというと、ユーザーのニーズが話のネタとして、多くのトレンドやタイムリーな話題を求めていることにある。コンテンツは新鮮さが重要で詳細ではない。 縦軸にユーザーの閲覧行動をおいた理由として、閲覧には必ず「見る」→「読む」というステップがある。雑誌・専門誌は興味のあるページを見つけて初めて読むという行動になる。一方、新聞はあらかじめコンテンツを「読む」ことが前提である。

【考察】

日本においては特定のターゲット・カテゴリーに関わる情報のみを扱う「領域特化型(バーティカル)」なキュレーションメディアが非常に多い。広告主にとっては、そのカテゴリーに興味を持つユーザーが閲覧していることから最適な出稿先メディアと言える。つまり、メディア運営側にとっては広告モデルでのマネタイズ(後に詳細説明)ができる。双方が潤う点でバーティカルメディアがトレンドとなっているのである。

また、バーティカルなコンテンツは専門性の高い知識や情報を提供している点で、コンテンツの質が高い。そのため、良質なコンテンツを提供するメディアはユーザーに対して付加価値を提供しており、その結果エンゲージメントも高まるのである。

では、海外のキュレーションメディアも日本と同じようにバーティカルなキュレーションメディアが人気であるのか?それとも全くタイプの異なる戦略をとるメディアが人気なのか?次は海外のキュレーションメディアについて分析をする。

②海外(米国)

【調査方法】

インターネット検索から総ダウンロード数(アプリ)、月間ユーザー数、会員登録数をもとに人気メディアを抽出している。

【調査結果】

既存の人気キュレーションメディアをリサーチしてまとめたものがこちらである。

1.Digg

2.Fripboard(マガジン系)

3.News360(ニュース系:配信記事をパーソナライズ化)

4.Reverb(ニュース系:配信記事をパーソナライズ化)

5.Zite(ニュース系:配信記事をパーソナライズ化)

6.Circa(ニュース系)

7.LinkedIn Pulse(ニュース系)

【考察】

海外キュレーションメディアは共通して、独自アルゴリズムによる記事のパーソナライズ化をしている。SNSなどと連携してユーザーの行動を分析・興味を学習して、ユーザー好みの記事を届けるという仕組みである。日本と違いバーティカルというよりかはく、新聞戦略による大多数のユーザー獲得と、アルゴリズムによる配信コンテンツの最適化をして、個々のユーザーのニーズを担保するというやり口である。

しかし、どれだけニュースをパーソナライズして届けたとしても、必ずしもそのニュースがユーザーに関わりのある出来事、もしくは興味のあるコンテンツではないという問題点がある。ここに挙げたメディアもまたごく一部の成功メディアであって、大半のパーソナライズニュースのスタートアップは失敗に終わっているのが現状である。実際に米国のキュレーションメディアを運営しているOutbrainの創業者、代表取締役Taron Gaiaiは、

「パーソナライズニュースから始めただけど、結局は路線変更した。我々が直面した困難がいくつかあって、①レコメンドする内容が、24時間ごとにがらっと変わる。②ニュースは消費財であり、時間がたつと、途端に価値が落ちる。③パーソナライズの方法にソーシャルグラフを使うけど、それを使っても良いレコメンドは出来ない。④パーソナライズのフィルターがうまく行き過ぎると、ユーザーはニュースを読み残している気がする、その一方でいくつかお気に入りのニュースサイトを巡るのは、面倒くさくてしない。」と述べている。

また、同社のGabe Riveraは「ユーザーは、Twitterとか、Facebookとか、パーソナライズされていないニュースサービスをいくつか合わせて使うから、どんなパーソナライズニュースよりもニュースを網羅出来る。」と述べている。

Ian Clarkeもまた「パーソナライズニュースって、誰も一緒に見ないからコミュニティの要素がない。人って映画見る時は、家より映画館で見る方が楽しいし、みんなと一緒に経験を分かち合うことに価値がある。」と述べている。

つまり、

1.パーソナライゼーションによるニュースのレコメンドはそもそも難しい

2.ユーザーが見たい記事は、いくつかのパーソナライズではないニュースの網羅である

3.自分一人で楽しむより、共有体験の方が楽しい

ということである。アルゴリズムだけでは成功させるのは難しいということである。

結論として、日本はバーティカルメディア、米国はホライズタルメディアと取り扱うコンテンツの幅が真逆であるということである。この結果を受けて日本と米国のビジネスモデルの違いが浮き彫りになった。当然のことながら、実際にキュレーションメディアを運営する各社には共通して、儲けるための戦略がある。それは日本も米国も変わらない。ビジネスとして成功させるためには、どのようにマネタイズをしているのだろうか。次は既存のWEBサイトのマネタイズ手法を踏まえ、日本で採用すべきキュレーションメディアのマネタイズ手法を考える。

【WEBビジネスモデルタイプとキュレーションメディアにおけるマネタイズ手法】

①広告モデル(オウンドメディア広告/動画広告など)

収益がトラフィック量と比例するため大規模なトラフィックを獲得する戦略が必要と同時に、サーバー等のインフラ設備にも気を使う必要がある。個人(ブロガー)などでも参入しやすいモデルである。アプリでは新聞戦略をとるGunosyや雑誌戦略をとるAnntena等のニュースキュレーションアプリがこれにあたる。

②課金モデル(フリーミアムによる追加オプション利用料)

会員数を積み上げれば積み上げるほど収益も安定する課金モデル。退会率を下げられるようサービスレベルを上げ、ユーザー満足度を向上させる工夫が必要。多くが基本無料で利用できるシステムに制限を設けて、機能拡張によって課金させる「フリーミアム方式」を採用する企業が多く、NewsPicksがこれを採用している。記事をメーター制にして、それ以上は月額1500円の課金で全てのサービスを開放するという仕組みである。サービスレベルが高いとユーザーはファンとなり、課金に対する抵抗を払しょくすることができる。

③仲介モデル

不動産仲介・転職求人サイトなどがこれにあたる。運営側に業界に関する知見が必要な場合が多く、市場規模も大きくないと収益化が困難である。継続的なマネタイズを実現するためには、リピート率の高い消費財を扱う業界の方が収益化しやすい。

④ECモデル

物品の購入をコンバージョンとしているため、情報の質が非常に重要である。なぜなら、ユーザーにとってのキュレーションメディアはあくまで情報収集の場所であって、購入が目的ではないからである。購入の前段階であるにも関わらず、事業者側の都合で購入を進めるような記事はユーザーに不快感を与える。購入に結びつく「導線」としての役割を念頭に信用獲得できる良質コンテンツが必要である。

以上が代表的なマネタイズ手法であるが、キュレーションメディアにおいては広告モデルによる収入が多数を占めている。リリース時はとにかくPV数を稼ぎ、その後マネタイズしていくというスタンスをとる企業においては、広告モデルが一番効率的である。 なぜなら多くのユーザーと高いエンゲージメント・レート(日次ユーザ数÷月間ユーザ数)の二つの指標はマネタイズにつながるユーザー・トラフィックを生み出すからである。

なお、キュレーションメディアに出稿される広告の種類については、従来からあるバナー広告と、通常コンテンツと見栄えが酷似しているネイティブ広告が主流である。特にニュース系やECモデルのマネタイズを採用するキュレーションメディアはネイティブ広告の恩恵を受けており、今後は数年間で年30%増とキュレーションメディアとネイティブ広告の相互補完による成長が見込まれている。

広告に頼らない新しいマネタイズ手法の模索も考えられるが、社内のリソースとマネタイズするまでの運用コストを鑑みると、立ち上げ当初は広告モデルを採用する企業がほとんどである。その後、ユーザー数を重ね、信頼関係を構築することによってフリーミアム形式による課金モデルでの収益をあげようとする。しかし、現在キュレーション市場は飽和状態にあり、広告費が分散している。出稿単価が下がり、PV数を稼いだとしてもそれに見合う収益があげられない状況にある。では、どうすればマネタイズできるかを述べ結びとしたい。

結論

各キュレーションメディアの市場規模や戦略の分析を通じて、今後マネタイズできるキュレーションメディアに必要なポイントを3点あげる

①バーティカルなキュレーションメディアとそれに関連するパートナー連携

バーティカルメディアはテーマを絞ったメディアであるがゆえに、広告主にとっては非常に出稿しやすいメディアである。リーチ数は総合的なメディアに比べ減るため、SEO対策や別のポータルからリンクを張るなど、様々な集客の導線を設定する必要がある。しかし、バーティカルメディアに出稿される広告は購買行動に結びつきやすい。なぜなら閲覧ユーザーは「それが好きな人」たちであって、コンテンツをきっかけに購買行動へ移る可能性が高いからである。コンテンツ内容に関連する商材・サービスを扱う企業にとっては、当然のことながら最適な出稿先メディアになりうる。

例えば、クックパッド(月間利用者5000万人)は大カテゴリー「食」の中の、小カテゴリー「料理」に特化してコンテンツを提供している「料理」に限定しているバーティカルメディアと言える。2012年10月の事業拡大においてクックパッドは真逆の「外食」に踏み込むことをせず、スーパーの特売情報を閲覧できるサービス「シュフモ」と連携した。クックパッドに掲載されているレシピとスーパーの特売品が結びついて、より家で料理をするモチベーションを上げる仕組みを作っている。

クックパッドは広告モデルでのマネタイズを、シュフモは質の高いユーザーの流入が図れる点で両社にメリットがある。このように、バーティカルメディアはそれを好みそうな属性をターゲットにすること。広告主の商材・サービスにコンテンツ内容を結びつけること。メディアパートナーに対してユーザーの誘導と売上の供給をもたらすことが必要である。

②良質なコンテンツを生み出すライターの確保・発掘

バーティカルメディアを運営する以上、コンテンツそのものが時間を増すごとに価値が上がり、ユーザーの資本財でなければならない。つまり、専門的な知識を持ち、テーマに合わせてセレクトする編成力の長けたライターを確保・発掘が必要となる。これは本来のキュレーターとしての意味合い(博物館、美術館、図書館、公文書館のような資料蓄積型文化施設において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職を指す。日本語では学芸員と呼ばれる)に沿うことである。これまではアルゴリズムでの配信で集客できたメディアも、レッドオーシャンの市場になり、質が問われるようになってきた。どこかで見たようなコンテンツは評価されず、このメディアしか絶対に手に入れられないコンテンツを提供するメディアこそ評価され生き残るのである。

③ターゲットユーザーとのエンゲージメントを高める仕組み作り

ユーザーは、自身の抱える課題を解決するためにたくさんのコンテンツをリサーチしている。ユーザー自身にキュレーターとして活躍してもらうことが必要である。つまり、ユーザー自身にキュレーターになる「権限」と「見返り」の両方を与え、エンゲージメントを強化していくアプローチである。

例えば、特定のトピックに対してターゲットもキュレーションに参加できる場所を設け、彼ら自身の問題解決につながるようなプラットフォームを提供する。仮に1冊の百科事典を皆で作りあげるとして、連載形式にして毎週のテーマに応じてコンテンツ生成を開放する。投稿されたコンテンツを自社内で精査・ランク付けして、良質なコンテンツを提供できるキュレーターには見返りを与える。これによって事業者側とターゲットユーザーの関係を強めることができる。ユーザー側はコミュニティを持ち、課金に対する抵抗感が減る。フリーミアム形式も顧客との信頼構築の先に通用する課金モデルであるため、①・②の順番を経てメディアとしてのブランディングを行うことがマネタイズに近づく。ブランドの世界観を共有したターゲットとコミュニケーションを図るための「場づくり」が今後のキュレーションメディアには必要である。

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この連載のバックナンバー

第2回:日本未上陸の海外キュレーションメディアの戦略と、そのビジネスモデル・マネタイズの検証

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第3回:日本における分散型メディア成功の可能性<NEW>

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