調査期間・担当
調査期間:2021年2月
担当者 :K.K
目的
JEPXの超高騰も落ち着きを取り戻し、次の高騰に備え、
各新電力事業者は対策に追われている状況が続く。
今回の原因の一因として、LNG不足が問題になったが、
果たして具体的にはどのようなことが起こっていたのか調査した。
高騰の要因
そもそも高騰した要因として
・12月末の寒波で電力需要が高まったこと
・世界規模のLNG(液化天然ガス)の需要に供給が追いつかないこと
・国内での電力供給量の減少
といった複合的な要素が絡み合っているのではないか、と推測される。
日本の電力は、約8割が火力発電によって賄われている。
そしてその半分近くが、LNGを燃料とするものだ。
しかしこの冬、LNGの供給は世界規模で不足気味になっている。
日本の主な天然ガスの仕入れ先であるオーストラリアの生産基地では、
トラブルが発生して生産能力が低下。
不幸なことに、オーストラリア以外のLNG生産基地でもトラブルが頻発し、
世界各地でLNGの供給問題が発生している。
一方、中国を中心に東アジアでのLNGの需要は急激に高まっていた。
そういった中で、冬の寒波が到来。
電力需要の高まりにともなう燃料供給への不安などから、
電力会社からJEPXへの電力供給量が減少。
市場価格が高騰する流れが生まれていったと考えられる。
日本の場合、海外の生産拠点から天然ガスを低温液化して
専用の船で輸送しなければならず、供給にはどうしても1〜2カ月を要してしまう。
今回のような突発的な燃料不足が起きた場合に、すぐに対応することが難しい事情もある。
JEPXでは、市場取引の前日夜に価格が決まるため、
調達に時間のかかる原料を事前に適正価格で十分確保しておくことが難しい。
価格の高い原料を大量に購入しても、
日本に届くまでに電力市場の価格が大きく下がってしまえば、損失が大きくなるからだ。
LNG価格の推移
天然ガス・LNG価格.png
JKM:Japan Korea Marker = 日本・韓国への持ち届け価格
北東アジアの査定されたスポットLNG価格
JKM(Japan Korea Marker = 日本・韓国への持ち届け価格)は、
複数の生産設備障害、北東アジアでの需要急増、パナマ運河の混雑、
船舶費用の価格高騰等複数要因が重なり、12月に入り急騰、年末年始を経てさらに上昇し、
2021年1月12日には史上最高値の100万Btu当たり32.5米ドルを記録した。
以下は、JEPXスポット価格の12月から1月末までの推移である。
JEPX平均単価(2020年12月~2021年1月).png
LNG価格の高騰は電力市場に影響を与えていることが分かる。
まとめ
今回のJEPXの価格高騰は、電力会社への大打撃だけでなく、
市場連動型の料金体系で契約している需要家にも影響があった。
今後は、LNG価格の動向にも注意しながら、
電力市場の制度がどのように変わっていくか注視する必要があるだろう。
・容量市場による、電気料金値上げ
・相対電源の取引量増加
・インバランス制度の見直し
など、電力業界は常に最新の情報に目を向けなければいけないと感じた。