前提
Facebook/Instagram広告の課金方式は主にCPC課金・CPM課金などがあるが、「広告の目的」でCVを選択した場合、CPM課金しか選択できない設定となっている。
そのため、現在オプティマイザーで運用しているダイレクトレスポンス目的のFacebook/Instagram広告のほとんどがCPM課金の課金方式をとっている。
CPM課金方式の場合、クライアントの目標CV数や目標CPAを達成するためにはCPM(1000インプレッションあたりのコスト)を下げることが非常に重要となる。なぜなら、CPMを下げることで同じ費用でもより多くのインプレッションを獲得することができ、それによりCVに繋がる機会を増やすことができるためだ。
CPC課金方式の場合でも考え方は同じで、CPC(1クリックあたりのコスト)を下げることが重要になる。
どちらの課金方式でも、課金されるタイミングが異なるだけで広告が配信される仕組みは同じで、
「広告オークション」によって広告が配信されるかどうかが決定される。
広告オークションでは、以下の3つの要素を組み合わせた全体の価値が最も高い広告が落札(=配信)される。
1.入札価格
2.推定アクション率
3.広告の品質
つまり、上記の3つの要素を最適化することで、CPM、もしくはCPCを下げることができるということになる。
しかし、入札価格と推定アクション率についてはシステムが判断するため、運用者がコントロールすることは難しい。
運用者が注力すべきは「広告の品質」を高めることであるが、広告の品質の詳細なスコアを見ることはできず(※1)、
また、どのように品質が決定されるのかについても『多くのソースを基に判断された広告の品質指標』としか
公表されていないのが現状である。
※1…「品質ランキング」項目において、平均以上、平均的、平均以下の3段階による評価は管理画面から確認することはできる。
目的
前述の通り、広告のパフォーマンスを向上させる上で
重要なCPMを下げる方法に「広告の品質」を上げることがあるとわかっているが、具体的に「広告の品質」を上げるために改善すべき指標は公表されていない。
しかし、GoogleやYahoo!におけるリスティング広告の品質スコアと同じく、ユーザーにとって有益と判断される広告が高く評価されるであろうと
想定されることから、広告のクリックやいいね!など、ユーザーのリアクション率が関連するという仮説を立てられる。
そこで本稿では、ユーザーのリアクション率を改善するため頻繁に広告クリエイティブの差し替えを行ったアカウントのクリエイティブ別CPMデータをもとにCPMと各指標の関連を分析し、CPMを下げるために重要な指標(=「広告の品質」に関連すると推定できる指標)を探る。
調査について
案件情報
●業種 :ペット服の製造・販売
●広告配信先:Facebook、Instagram、オーディエンスネットワーク(自動配置)
●広告種別 :シングル画像広告、カルーセル画像広告、シングル動画広告、
コレクション広告
●成果地点 :ペット服・雑貨の購入完了
ターゲティング
●地域 :日本
●年齢 :25-64歳
●性別 :女性
●興味関心:Dog collar, Dog grooming, Dog harness, Dog toy, Dog training, Dog walking,
ドッグフード, ドッグラン, 犬, プードル, チワワ
方法
●集計期間:2019年5月14日~2019年7月24日
●データ数:75件(クリエイティブの数合計)
●各クリエイティブごとにCPMとユーザーのリアクションに関する指標を管理画面から抽出し、
CPMとそれぞれの指標について相関分析を行った。
なお相関関係の強さについては、一般的な値として、相関係数rが
●r=±0.0~±0.2の時 ほとんど相関関係がない
●r=±0.2~±0.4の時 弱い相関関係がある
●r=±0.4~±0.7の時 相関関係がある
●r=±0.7~±0.9の時 強い相関関係がある
●r=±0.9~±1.0の時 ほぼ完全な相関がある
として評価した。
結果
(1)CPMとCTR
CPMとCTRについてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=0.21となり、弱い正の相関関係があるとわかった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
(2)CPMと投稿の保存数
CPMと投稿の保存数についてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=-0.48となり、負の相関関係があるとわかった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
(3)CPMと投稿のシェア数
CPMと投稿のシェア数についてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=-0.17となり、ほとんど相関関係なしとなった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
(4)CPMとリアクション数
CPMと投稿のリアクション数についてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=-0.20となり、弱い負の相関関係があるとわかった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
(5)CPMとカート追加数
CPMとカート追加数についてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=-0.30となり、弱い負の相関関係があるとわかった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
(6)CPMと購入数
CPMと購入加数についてピアソンの積率相関係数を算出したところ、r=-0.25となり、弱い負の相関関係があるとわかった。
また、散布図を作成したところ下記の通りとなった。
考察
今回の結果で、CPMと最も強い相関関係が示されたのは投稿の保存数であった。
負の相関関係があるということは、投稿の保存数が多いクリエイティブほどCPMが下がる関係にあるということである。
また、その次に相関関係があると示されたのはCPMとカートの追加数であった。
これは通常であればマイクロCVとなるCV地点だが、今回のアカウントでは広告配信の最適化対象に設定している。
このことから、管理画面上で「結果」列にあたる数値が多いクリエイティブほどCPMが下がる関係にあると言える。
リアクション数、購入数についても、CPMと弱い負の相関関係が見られた。
つまり、これらの指標が向上することでCPMが下がる関係にあるといえる。
弱い正の相関があると示されたCTRとCPMの関係については、CTRが上がるとCPMも上がるという関係になるが、
これはCPMの著しく高いクリエイティブについては精査を行い、
早い段階で停止していたためにインプレッション数が極端に少なく、
偶然CTRが高い結果となってしまった影響があると考えられるため、さらなる検証の余地がある。
唯一相関関係なしとなったCPMと投稿のシェア数については、投稿のシェア数が少なく、
またシェア数が5件と飛びぬけたクリエイティブが1つあったために相関係数r<0.2となったが、
散布図を見ると投稿シェア数が1件のクリエイティブがCPM500円前後に集中していることがわかるため、
今後さらに多くのデータを用いて検証を行えば相関関係を見つけられる可能性がある。
まとめ
以上の分析結果から、CPMを下げるために重要な指標(=「広告の品質」に関連すると推定できる指標)は、影響の大きい順に
1.投稿の保存数
2.コンバージョン数(広告の最適化対象)
3.最適化対象以外のコンバージョン数
4.CTR
5.リアクション数
6.投稿シェア数
といえる。
このことから、これまではクリエイティブテストの際にCTRを最重要視することが多かったが、
広告のパフォーマンス改善という視点で見ると「保存される(ユーザーが見返したくなる)クリエイティブ」の探求が
重要であるとわかった。
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